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将棋:考える人としゃべる人

◆将棋のTV中継
NHK BS2では将棋の名人戦と竜王戦を中継する。
トップ棋士の対戦を解説付きで見れる貴重な番組である。
先日までの名人戦も全6局が中継された。

◆考える人
真剣に考えている人の姿を拝見できる機会はまずありえない。
将棋と囲碁のTV中継は、それを生の映像で提供してくれる。
次の一手を読みふける棋士の姿には、深い感動を覚える。

一対一の勝負で、誰にも助けを求めることはできない。
対戦相手と戦い、自らと戦い、時間とも戦う。
「待った」ができないから、慎重の上にも慎重に読む。

指した手は全て棋譜に記録され、詳細に分析・評価される。
棋譜と勝負を汚さないのもプロ棋士の心得である。
勝てばいいとも言えず、よい手を指しても負けてはだめだ。

読みに没頭する姿は「考える人」を具現している。
静かな対局室に扇子を開閉する音だけが響く。
姿勢を変えては、盤面に集中する「考える人」は崇高でさえある。

◆しゃべる人
そのTV画面に見入っていると、邪魔な雑音が入る。
司会担当アナの言わずもがなのおしゃべりだ。
静寂の思考空間に土足で踏込む無神経さに腹が立つ。

「現在の対局室の様子です。画面の左側が挑戦者**で、右側が名人**です。」
ただいま、**の手番で、云々」
うるさい! だまれ! 引っ込め! 失せろ!

だいたい将棋・囲碁のTV中継を視ているような人には、分かりきっていることだ。
貴重な「考えている」場面を、司会アナもじっくりと味わったらどうなんだ。
勝負の緊迫感に浸ろうとしている視聴者の思いを、司会のしゃべりがブチ壊す。

野球で騒音を撒き散らす私設応援団や、駅のホームでマイクでがなり続ける駅員と同じだ。
画面の音声が途絶えたら、それを補充するのがアナの役目と思っているのだろう。
「考える人」が主役の将棋中継に、こんなアナは無用だ。ゴミ箱へドラッグ&ドロップ!

◆挑戦者の手の震え
名人位を奪う第6局の最終手、「金」を打つ挑戦者・羽生二冠の手が震えていた。
TV(録画中継)に映されたこの緊迫感はすさまじい。
終局後のインタビューで、羽生名人は珍しく言葉少なであった。