昔ながらの線香花火 ~ 東京・蔵前「山縣商店」
◆線香花火との新しい出会い
赤い火玉がジュワーッと丸くなる。
パチパチと火花が激しく飛び始める。
やがて火玉が小さくなると火花も小さくなる。
時折パチ、パチして、ハラハラとしだれ柳。
ポトリと火玉が落ちて、線香花火『大江戸牡丹』は終わる。
火薬の煙と匂いの中で、光と影の約3分間のショーの余韻に浸る。
◇ ◇ ◇
子供の頃、夏になるとよく花火で遊んだ。
いろいろな花火の中で、なぜか線香花火が懐かしい。
想い出に再会するつもりが、全く新しい線香花火と出会うこととなった。
◆『大江戸牡丹』とは
『大江戸牡丹』は、江戸時代から創られていた線香花火を純国産で「復活」させたものだ。
伝統的な国産品は、中国産に押され、10年ほど前迄に消滅した。
それを東京・蔵前の「山縣商店」が、平成12年(2000年)に「復活」させた。
◆山縣商店へ
いつぞや新聞で見た覚えがあり、改めてWeb検索で確認した。
夏には入手困難かも知れないので、思い立ったが吉日と早速買出しに。(4/16)
お店は、JR浅草橋駅から浅草方面へ徒歩約8分、蔵前橋通りとの交差点角にある。
どう見ても花火屋さんらしくない店構え、どう見ても花火屋さんらしくない店内。
売っている花火は線香花火だけ。他にはレトロなブリキのオモチャが数種類。
『大江戸牡丹』は、10本入りのパッケージ(おシャレなデザイン)で525円。
10袋をまとめ買いし、他の二つのブランドを各1袋買った。
ご主人に簡単に商品の説明をしていただいたが、このときは馬の耳に念仏。
(今は教えていただきたいことがいろいろとある)
◆線香花火に<技と粋の極み>を見る
『大江戸牡丹』は、江戸の花火職人の技と粋な心の結晶を「復活」させた。
細いこよりの先のわずかな火薬で、起承転結の光の芸術を演出する。
火花を飛ばしながら、四季の移ろい、諸行無常の世の中までを思わせる。
「線香花火のようにはかない」という。
この線香花火kこそが、それを深く実感させてくれる。
『大江戸牡丹』は、子供のオモチャを超えて、日本伝統の「和の心」を呼び覚ます。
たかが線香花火に技と粋の極致を込める匠達と、それを読み解き賞でる市井の人々。
そこに世界に誇る日本の文化の土壌がある。
GDPや経済効率を妄信する政治家・経営者・学者・官僚共は、線香花火を拝むべし。
【ここで一首】
<華やかに やがて散りいく いろは歌 線香花火に 大江戸の芸>
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