ハサ掛け米はおひつと相性がいい
◆自然と自然の出会い
ハサ掛け米は、おひつと実に相性がいい。
ハサ掛け米は、米をハサに掛けて自然乾燥させたもの。
曲げわっぱは、天然杉を組み立てたもの。
このおひつにご飯を入れて、その翌日。
ハサ掛け米は、ほどよくしっとりしていて、均一に粒々。
おひつと、芯の水分までやりとりして、バランスを取っている感じだ。
機械的(電気、重油)乾燥では、表面からしか水分のやり取りができない。
乾燥してくると、おひつや隣の飯粒とひっつくこともある。
レンジで暖めても、食事中に味がだんだん落ちていく。
◆ハサ掛け米の自然乾燥の極意
刈り取って束ねた稲を逆さ(穂を下)にして、天日でじっくり乾燥させるハサ掛け。
稲刈り後に雨が多くなる越後の米作りの知恵である。
その極意は、乾燥の進むステップにある。
昼間、太陽熱に暖められて米(もみ付き)は膨張し、表面から水分が蒸発する。
夜間、気温が下がり、米粒は収縮し、芯の方の水分が乾燥した表面方向に移動する。
このステップを3週間ほど繰り返し、米はゆっくりと均一に乾燥する。
ちょうど、タオルやふきんをゆすいで固く絞っても、少したつと、また絞れるようなもの。
外から絞るだけではダメで、中から沁み出す水分を絞る必要がある。
干物なども原理は同じで、天日干しは味が違う。
加えて、ハサに掛けている間に、茎(稲わら)部分から養分が補充される。
逆さに干しているから、重力で穂の部分に落ちてくる。
そのため、うま味がいっそう増すといわれている。
◆現代農法では
機械化された現代農法では、コンバインで稲刈りをする。
刈り取りながら、米粒をそぎ取ってタンクに貯めていく。
稲わらは刻んで、後から田んぼに撒いていく。(そのまま肥料にする)
あとは乾燥機で、熱風をあてて短時間で乾燥させる。
表面から水分を蒸発させ、米粒がある比率で軽くなれば、完了。
つまり、表面が乾燥しても芯には水分が残り、不均一だ。しかもうま味の補充もない。
◆自然を生かす伝統の技
どうやら、コンバイン、乾燥機、あるいは炊飯器などでは及ばない、非効率なうま味の世界がある。
自然と共存する日本の米作りの匠の技である。
真においしい米を食べ続けるために、この技を失ってはならないと、強く思う。
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