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2009年10月03日

実りの秋2009:茶飲み話

◆農家での茶飲み話
9月下旬、稲刈りが雨で中止になった日、新発田・西名柄のHさん宅。
雑談をしていると、庭先に近所の農家の人が次々と顔を出す。
「上がってお茶飲んで行けや」とHさんが声をかける。

で、お昼に失礼するまでに、四人の方が入れ替わりで立ち寄った。
話の半分位は、ことばも経緯も分からなかったが、いくつかのことに気がついた。
農家の人達の茶飲み話を伺う貴重な時間の中に、農業の抱える問題が垣間見えた。

◆味が話題にならない
刈入れの進み具合、実り具合、大規模化の問題、土建業者の農業参入、などなど。
しかし、「米の味」は話題に上らなかった!
さもありなん、ではある。

多くの農家は、JAのカントリーエレベータに米の乾燥と籾摺りを依存している。
JAの指定する品種、肥料、農薬を使用して米を作る。販売もJA依存だ。
JAの受入れ検査基準をパスすれば、収量×基準米価の売上げになる。

カントリーエレベータでは、各農家の米が混合されてしまう。
農家は、自らの味や品質ではなく、JAの検査基準に合わせて米を作る。
その米が「新潟コシヒカリ」として、消費者に販売されている。

 ◇ ◇ ◇

例の米仙人は、味を求めてハサ掛けをしている。
また、十数haの米作りをしている農家では、食味計で高評価を得たと自慢していた。
自前で米の乾燥と籾摺りを行い、直販をしている農家である。

◆農家の仕事を奪う機械化
「高い機械を使って、作業(田植え、稲刈り)はあっという間に終わってしまう。
あとはヒマでやることがない」とポツリ。
機械が農家の仕事(人が営む)を奪っている!

人の重要な生き甲斐は、仕事をすることで、そこに社会との接点がある。
農家にとっては、米を作ることが生き甲斐だ。
機械化、大規模化は、中小規模の農家の仕事を奪い、生き甲斐を消滅させている。

高齢化と後継者難、経営効率の低さを解決しようと、農地の集約が推進されている。
が、官僚・学者の机上の計算では、多くの農家の生き甲斐など全く無視されている。
経済の論理で社会を切り刻む政策は、早急に改めるべき時期にきている。

2009年10月02日

米仙人:ハサ掛け作業

◆ハサ掛けの作業
仙人は、一人でハサ掛けをする。
ふつうは、稲束を渡す人と掛ける人の二人一組。
そのための工夫がある。

五段のハサをやや低めに組みあげる。(これも毎年作り直す)
下の三段には、一輪車で稲を運んできて掛ける。
上の二段には、軽トラックで稲を運んできて、荷台にのって掛ける。

今回は、滞在時間中には、仙人の一人ハサ掛け作業を撮影できなかった。
自分と親戚で、傍観しているわけにもいかないところがあったためだ。
ありのままを記録するということは、なかなかに難しい。

それでも、仙人と共にハサ掛けをしたホンのわずかな時間は、貴重な体験であった。
仙人の作業の流れが分かったことと、撮影のポイントを把握できたことも大きい。
来年こそは、仙人の作業の全体を撮影できるように、今から気合を入れている。

ということで、仙人と親戚の二人一組のハサ掛け作業。
下から稲束を渡す、それを1対2に分け、竿に掛けてぎゅっと詰める。
この作業の繰り返し。

親戚も若い頃、散々にハサ掛けをやっていた。(やらされていた)
天気の様子を見ながら、刈った稲はその日の中にハサに掛ける。
暗くなるまで作業を続けたそうだ。 (さすがに手際がよい)

自分は、バインダーで刈った稲束を山にまとめる作業をした。(それしかできない)
しかし、数分でたちまち腰と膝がくたびれて痛くなる。 情けない。
農業ではこういう作業を、延々と続けなくてはならないのである。

◆ハサ掛けのあと
約3週間後、稲は自然の中で乾燥を終える。
ハサからはずした稲束は、脱穀機で脱穀(もみ殻の付いた米粒をワラから分離)する。
それから、籾摺り機でもみ殻を除いて、玄米にする。

この作業工程も見てみたいが、仙人の側に張り付いていないとムリのように思う。
米作りは、一連の作業が、連綿と続く。
それを見届けるには、相当の努力と粘りと時間と幸運が必要だ。

◆ハサ掛けの効用
ハサ掛けは、優れた米の自然乾燥法だ。
日中、陽射しを浴びて米粒の表面から水分が蒸発する。
夜間、冷気に触れて米粒は収縮し、奥の水分が表面方向に滲み出てくる。

途中、雨も降るし、強い風も吹くし、自然のままだ。
逆さに掛けられているから、ワラの軸に残っている養分が米粒に降りてくる。
これがハサ掛けの天日干しだ。

最新の乾燥機は、コンバインで脱穀した米粒を、温風で舞わせるようにして乾燥する。
何回か操り返すせば、奥の水分も除かれる。 しかし、暗黒のサイロの中での乾燥だ。
天日には当たらないし、ワラからの養分補給もない。

◆仙人のこだわり
仙人はバインダーで刈り、ハサで天日乾燥する。
コンバインも乾燥機も使わない。
「ハサ掛けの米はうまい」からだ。

化学肥料も農薬も使わず、土を守り、安全な米を作り続ける。
そんな仙人のこだわりの集大成を、形で見せてくれるハサ掛けの風景。
西に傾きかけた陽射しに金色に輝いていた。


(写真は、9月27日に撮影)

2009年10月01日

米仙人:稲刈り作業

◆ハサ掛け用の稲刈り
稲をハサ掛け用に刈るには、コンバインを使わない。
それでは脱穀(穂から籾をそぎ落とす)されてしまう。
よって、仙人はバインダーを使う。

バインダーは以前はふつうに稲刈りに使われていた機械。
自走式の小型エンジン付きで、後ろからハンドルで走行を操作する。
稲を左周りに、一条ずつ刈っていく。

◆仙人の稲刈り
まず、田んぼの隅の稲を鎌で手刈りする。
バインダーを田んぼに入れる空間を作るため。(コンバインでも同様)
仙人の作業は実に手早く、サッサッサッと刈り終える。 撮影する間もなし。

バインダーは、一条で5~6株位を刈ると、ビニール紐で縛って、田んぼに放り出す。
つぎつぎと稲束が田んぼに並んでいく。
単調ながら、緊張感のある力仕事が続く。

仙人は粛々として、無駄のない動作で、途中で休むこともない。
娘さんが稲束を、ところどころに山積みにまとめている。 陽射しがかなり強い。

小さな田んぼではあるが、30分程で一気に刈り終えた。(87歳!)

(写真は、9月27日に撮影)