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米仙人:ハサ掛け作業

◆ハサ掛けの作業
仙人は、一人でハサ掛けをする。
ふつうは、稲束を渡す人と掛ける人の二人一組。
そのための工夫がある。

五段のハサをやや低めに組みあげる。(これも毎年作り直す)
下の三段には、一輪車で稲を運んできて掛ける。
上の二段には、軽トラックで稲を運んできて、荷台にのって掛ける。

今回は、滞在時間中には、仙人の一人ハサ掛け作業を撮影できなかった。
自分と親戚で、傍観しているわけにもいかないところがあったためだ。
ありのままを記録するということは、なかなかに難しい。

それでも、仙人と共にハサ掛けをしたホンのわずかな時間は、貴重な体験であった。
仙人の作業の流れが分かったことと、撮影のポイントを把握できたことも大きい。
来年こそは、仙人の作業の全体を撮影できるように、今から気合を入れている。

ということで、仙人と親戚の二人一組のハサ掛け作業。
下から稲束を渡す、それを1対2に分け、竿に掛けてぎゅっと詰める。
この作業の繰り返し。

親戚も若い頃、散々にハサ掛けをやっていた。(やらされていた)
天気の様子を見ながら、刈った稲はその日の中にハサに掛ける。
暗くなるまで作業を続けたそうだ。 (さすがに手際がよい)

自分は、バインダーで刈った稲束を山にまとめる作業をした。(それしかできない)
しかし、数分でたちまち腰と膝がくたびれて痛くなる。 情けない。
農業ではこういう作業を、延々と続けなくてはならないのである。

◆ハサ掛けのあと
約3週間後、稲は自然の中で乾燥を終える。
ハサからはずした稲束は、脱穀機で脱穀(もみ殻の付いた米粒をワラから分離)する。
それから、籾摺り機でもみ殻を除いて、玄米にする。

この作業工程も見てみたいが、仙人の側に張り付いていないとムリのように思う。
米作りは、一連の作業が、連綿と続く。
それを見届けるには、相当の努力と粘りと時間と幸運が必要だ。

◆ハサ掛けの効用
ハサ掛けは、優れた米の自然乾燥法だ。
日中、陽射しを浴びて米粒の表面から水分が蒸発する。
夜間、冷気に触れて米粒は収縮し、奥の水分が表面方向に滲み出てくる。

途中、雨も降るし、強い風も吹くし、自然のままだ。
逆さに掛けられているから、ワラの軸に残っている養分が米粒に降りてくる。
これがハサ掛けの天日干しだ。

最新の乾燥機は、コンバインで脱穀した米粒を、温風で舞わせるようにして乾燥する。
何回か操り返すせば、奥の水分も除かれる。 しかし、暗黒のサイロの中での乾燥だ。
天日には当たらないし、ワラからの養分補給もない。

◆仙人のこだわり
仙人はバインダーで刈り、ハサで天日乾燥する。
コンバインも乾燥機も使わない。
「ハサ掛けの米はうまい」からだ。

化学肥料も農薬も使わず、土を守り、安全な米を作り続ける。
そんな仙人のこだわりの集大成を、形で見せてくれるハサ掛けの風景。
西に傾きかけた陽射しに金色に輝いていた。


(写真は、9月27日に撮影)