吉野葛:神楽坂「東京松屋本店」
◆吉野葛の専門店
吉野葛は、奈良県の吉野産の葛である。
その吉野で江戸時代天保年間に創業した「松屋本店」。
その東京店が、東京松屋本店」。
11日(火)、お店を初めて訪れた。(この前は、定休日であった)
当店は昨年12月に、神楽坂通りからここに移転してきたそうだ。
神楽坂では約6年の営業という。知る人ぞ知る、のお店のようだ。
◆お店の様子
入り口に「吉野葛」と書いてなければ、何のお店か分らなかった。
ドアを開けると、ちょうどお客さんが一人いて、ママさんが応対していた。
これ幸いとショーケースをのぞいたりする。
まもなくお客さんが帰って、ママさんにいろいろと教えてもらう。
ここは販売のみで、くず湯を飲んだり、くず餅を食べたりはできない。残念。
くず湯(5杯分525円)を買って、意外な『柚子味噌』(200g入630円)も買ってみた。
◆『吉野拾遺』=くず湯の素
葛に和三盆を加えて、一杯分を四角に固めたくず湯の素が、商品名『吉野拾遺』。
これを暖めたカップに入れて、熱湯を注ぐ。
30秒ほどなじませて、スプーンでかき混ぜれば、くず湯のできあがり。
「片栗粉と違って、とても滑らかで、冷めてもトロリとしています。
当店の商品は、純粋の吉野葛だけを使用しています」とママさん。
さすが、老舗の自信と貫禄。
帰宅して早速作ってみたら、薄甘でトロリとして、熱々でおいしいくず湯が賞味できた。。
子供の頃、風邪や病気で食欲がないとき、母がくず湯を作ってくれた。
あれは片栗粉だったと思うけど、ふと懐かしさがよみがえる。
◆『柚子味噌』
吉野葛と味噌の共通点は?
そんなものがあるわけないが、当店は別。
「松屋本店」はもともと醤油・味噌を醸造していた!
ということで、味噌造りの伝統技法を生かしたのが『柚子味噌』。
赤出し味噌のようにねっとりとして甘味があって、柚子の風味。
ほろふき大根やコンニャクにぴったりだし、そのままでなめるのもいい。
◆etc.
商品は他にもあって、これからも楽しませてもらおう。
くず餅、くず切り、干菓子いろいろ、葛粉など。
『法論味噌』(ほろみそ)というのもある。
どの商品もお手ごろ値段で、組合せも自由(修正→箱入りセットは組合固定)。
お茶会やパーティーでも重宝されるとのこと。
さもありなん、と思う。
◆余談:葛(くず)のあれこれ
葛は、まめ科の蔓性植物で、夏の終り頃に紅紫色の花を咲かせる。
ひと夏に10mも蔓が伸びるといわれるほど成長力がある。
根に含まれる澱粉は食用に、蔓の繊維は衣料にされていた。
大和(奈良県)の国栖(くず)の帰化人達が優れて利用したので、「くず」と呼ばれた。
この植物の漢名が「葛」であったので、「くず=葛」となった。
秋の七草のひとつ。(萩 薄 桔梗 撫子 葛 藤袴 女郎花)
風にひるがえると葉裏の白さが目立つ様子から「裏見=うらみ」を「恨み」に掛けた。
「葛」と「恨み」で、和歌に詠まれたりした。
<恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太(しのだ)の森の 恨み葛の葉>
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