« 『でんない柿』のつれづれ | メイン | F1野菜:遺伝的生物的特性 »

『でんない柿』との食べ比べ

◆「富有柿」&「おけさ柿」と食べてみた
八百富で「富有柿」と「おけさ柿」を買った。
『でんない柿』の味と比べてみるためだ。
生(なま)の柿を買うのは何年振りのことか。

◆「富有柿」
<完全甘柿>で、岐阜県が原産地。
全国の柿生産量の三分の一位を占める柿の代名詞的品種。
平ったくて大きい実で、3個800円。

IMGP3358_320.jpg

ごく普通の甘さで、やや硬く、ジューシーさはまあまあ。
種は4個入っていたが、実が大きい割りには小さくて邪魔にならない。
実が大きいので食べでがある。

◆「おけさ柿」
<完全渋柿>を渋抜きしたもので、佐渡ヶ島産。
民謡の佐渡おけさに因んだ名称。
平ったくて中位の大きさの実で、4個400円。

IMGP3361_320.jpg

ごく普通の甘さで、やや柔かく、ジューシーさもある。
渋抜きの柿の特徴が出ている。
種は無い。元々の平核無(ひらたねなし)の名の通り。

◆やはり『でんない柿』だ
個人的には、やはり『でんない柿』に軍配を挙げたい。
ジューシーな実に濃厚な甘味が詰まっている。
実の形も優雅な四角柱スタイルで、背が高くツンと尖っていて気品がある。

IMGP3345_320.jpg

「富有柿」も「おけさ柿」も甘さが今ひとつ物足りない。
ジューシーさも『でんない柿』に全然及ばない。
形も平べったい丸型で、かなり庶民的風貌だ。

◆大量消費社会のシンボル:「富有柿」
とはいっても、「富有柿」が柿の標準だ、ということができる。
現代の大量生産大量消費社会にもっよもマッチした柿、ということだ。
消費者にとっても流通販売業者にとっても生産者にとっても、とにかく都合がよい。

-- ・ほどほどの甘さと食感が保証され、当たりはずれがない
-- ・硬さがあり、日持ちがいいので、輸送や保管に問題がない
-- ・各地で栽培可能なので、効果的な栽培方法が広く共有され、品種改良も進む

◆地域限定の銘品:『でんない柿』
『でんない柿』は<不完全甘柿>なので、渋い実も混在する。
ジューシーな極甘(=種が多い)から、かなり渋い(=種が少ない)のまでがある。
極甘の実は熟して柔かく、日持ちが良くないので、輸送や保存には適さない。

『でんない柿』は、つまり、全国的は標準の柿にはなり得ない。
地域限定の郷土の<銘品>なのである。
<銘品>と認識すれば、細々と生きる『でんない柿』はみごと復活するのだが……。