原発事故:原子力無策
◆原子力無策のツケ
原発事故の深刻さと政治的対応の混迷は、日本の原子力無策のツケといえる。
ひとつには、『原子力安全神話』の流布と大津波による神話崩壊である。
ふたつには、『放射能リテラシーの欠如』による風評と住民の不安・不満である。
◆『原子力安全神話』
原子炉は絶対に安全で、放射能が外部に漏れる心配はない。
これが『原子力安全神話』である。
したがって、国でも地域でも、放射能対策は全く講じられていなかった。
政・官・産・学の原子力複合体にマスコミも加担して、この神話を築き上げてきた。
自分でも、原子力は安全だと思い込んでいた。
クリーンで、安価で、安定して安全なエネルギー、‥‥。
それが大津波で、完璧に崩壊してしまった。
大量の放射性物質が、原発の外部に漏れ、無防備なままの環境を広く汚染した。
原子炉を安定させる手段は失われ、危機的な状態は長期間続く。
◆『放射能リテラシーの欠如』
わが国では、<放射能>といえば、広島・長崎の悲惨な被爆体験が想起される。
反<放射能>は、反戦運動や反原発運動とも絡んで、政治・社会の対立を生んだ。
反原発では、<放射能>源である原発の存在は、全否定される。
存在を否定する原発の<放射能>対策を考えれば、存在を認める自己矛盾に陥る。
<放射能>の漏れを<想定外>にしてしまったのである。
現実には存在する原発、そこから<放射能>が大量に漏れ、なすすべがなかった。
一方、原発推進派は、<放射能>漏れはない、として原発を建設してきた。
<放射能>は無いのだから対策は不要だ。
<放射能>の漏れを<想定外>にしてしまったのである。
◇ ◇ ◇
いずれにしても、<放射能>とまともに向き合ってこなかった。
<放射能>について、知識、危険性、避難計画などは周知徹底されることがなかった。
事故後の混乱は、この<放射能>リテラシーが欠如した結果もたらされた<人災>だ。
<放射能>汚染の風評被害も深刻である。
こちらは、福島県はもとより、茨城県、千葉県なども巻き込んでいる・
日本全体でも、輸出や観光などに大きな被害が発生している。
風評は、政府や東電の情報提供・開示の稚拙さにも起因している。
緊急時の情報リテラシーの重要性を認識しなければ、国家に重大な損失が生じる。
事故後の混迷は、この情報リテラシーが欠如した結果もたらされた<人災>だ。
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