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2011年06月30日

世相:国会は政局、また政局

◆菅総理の禁じ手?人事
国会では、復興庁の設置が決まり、会期も8月末まで延長された。
これを受けて、菅総理は復興大臣の任命と小幅な内閣改造を行なった。
そこに<禁じ手>と思われる奇策を仕組んだ。

自民党の浜田参議院議員を引き抜いて、総務政務官に充てたのである。
先の内閣不信任案の採決で棄権した前・政務官を罷免し、浜田氏を後任とした。
浜田氏は自民党を離党し、任命を受けた。

当然、自民党は猛反発し、与党との国会運営の協議を拒否した。
与党内からも反発が出て、両院議員総会で異論が強く出された。
党執行部も苦虫を噛み潰したような思いを表明した。

◆禁じ手の狙い
なぜ、退陣の花道を飾るべき時に、このような<禁じ手>を仕組んだのか。
それは、「再生可能エネルギー特別措置法」を参議院で可決するためだ。
この法案には、共産党・社民党の賛成が見込まれ、過半数にあと1人だったのである。

そこで、参議院自民党から1本釣りの形で、浜田氏を引き抜いた。
これで、菅総理が退陣のメドとする3法案は、全て成立の道筋が見えたことになる。
ただ、なりふりかまわぬ総理も総理なら、浜田氏も浜田氏、抜かれた自民党も自民党だ。

-- ◇野党振る 与党も聞かず 菅総理 禁じ手人事で 腹くくるとは

◆政局また政局
自民党と公明党は、延長国会の審議に応じる姿勢を転じた。
総理の民主党両院議員総会における、解散含みの発言にも反発。
松本復興相の「3.11以降、自民党も公明党も民主党も嫌いだ」発言にも反発している。

民主党は実にだらしない姿をさらしているが、自公両党は政局だけのカラ政党そのものだ。
内閣不信任案で小沢・鳩山Gの造反を期待するなど、震災復興を忘れ、政局オンリーだ。
震災・原発事故対応では、政府のあげ足取りに終始し、<脱原発>も打ち出せない。

◆政治廃(すた)れば官僚はびこる
こんなテイたらくの国会・政治が続いているから、官僚(霞ヶ関)主導の政策が進む。
財務省主導の、財政再建優先の増税路線。
経済産業省主導の、原発再稼動、東電救済・電力独占体制維持路線、など。

-- ◇流れゆく 政局の行方は 知らねども 霞に落ちる 政治の泥舟


◆元歌(もとうた)
-- ◇ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 韓(から)紅に 水くくるとは
--   (在原業平 古今集 平安初期)

-- ◇暮れてゆく 春のみなとは 知らねども 霞に落つる 宇治の柴舟
--   (寂蓮 新古今集 平安末期)

2011年06月29日

原発事故:経済産業省の動き

◆原発の再稼動
経済産業省は、定期点検を終了した原発の再稼動を進めようとしている。
もし、再稼動ができないと、約1年後には全ての原発が停止状態になる。
今年の夏が最大の供給電力ピンチであるが、不安定な状況はさらに悪化する。

それを避けるためにも、再稼動はぜひ実現させたいのだ。
そこで、経済産業省は画策する。
そのシナリオは、こうだ。

◆玄海原発2&3号機が狙い目
まずは、傘下の安全・保安院が、全国の原発の安全審査を実施する。
その結果、原発は安全である、と宣言する。
ついで、原発の地元自治体と知事に、海江田大臣自らが説明に出向く。

狙い目は、玄海原発2&3号機だ。
ここは、地元自治体と知事が再稼動受入れを表明しているという。
海江田大臣も現地入りし、シナリオは着々と進行しているようだ。

◆まやかしのシナリオ
このシナリオは、全く従来の手法と変っていない。
フクシマの事故にもかかわらず、である。
事故後に批判されている官僚的なれ合いの最たるものだ。

そもそも、フクシマの事故の原因分析は未だ着手されず、収束作業も先が不透明だ。
避難地域と避難住民の悲惨な状況を見れば、原発の危険性は現実の問題なのだ。
そんな状態で、何を以って、原発は安全だといえるのか。

また、地元住民への説明会も怪しい。
あらかじめ参加者をフィルターにかけて、無難な数人に対して実施したともいう。
フクシマの教訓は、風評被害も含めれば、広域的な意見聴取が必要なことを示している。

◆堂々の正論を
姑息な官僚的シナリオではなく、堂々とした正論で、原発の要否を語るべき時だ。
事故がなくても、原発からは、放射能を含んだ使用済み核燃料が後世に残される。
<脱原発>への実現可能なシナリオこそ、多くの国民が望んでいるものなのである。

相変わらずの官僚的手法がまかり通る社会。
相変わらずの政局に明け暮れる国会。
マスコミを含む原子力村を、まず、完全に破壊せねば。

-- ◇政・官・産 学・マスコミの 五稜郭 国民不在の 原子力村

2011年06月28日

世相:脱原発解散?

◆<脱原発>で解散総選挙?
今日(6/28)の午後、民主党の両院議員総会が開かれた。
この場で、菅総理(代表)の気になる趣旨の発言があった。
「エネルギー政策がつぎの総選挙の争点になる」

あるいは、秋に自らの手で衆議院解散に打って出るつもりがあるのか。
四面楚歌の下で<郵政解散>を演出し、大勝した小泉・元総理にならうのか。
それは決して許される政治手法ではない。

<脱原発>は、正しい方向であると思うが、国民的議論はまだ不十分だ。
<脱原発>でなくてはならないという強固な理念を、まず確立する必要がある。
<脱原発>は、<郵政民営化>とは比較にならない、国と社会の基本政策なのだから。

◆菅総理の終焉
菅総理には、唐突で、周到な準備を怠る傾向がますます顕著だ。
リーダーシップを履き違えているように思われる。
早期の交代は、もはや、止むを得ない。

-- ◇辞めざらん 総理の椅子の 思い出に いまひと夢の 脱原発解散

◆元歌(もとうた)
-- ◇あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな
--   (泉式部 後拾遺集 平安中期)

2011年06月17日

原発事故:神話崩壊に思う(続)

◆原子力神話への信仰
3.11の事故まで、自分も原子力神話を信じていた。
むしろ、心情的には推進派であった。(反省また反省)
神話は、実に美しい文脈であった。

-- ◇エネルギー 問う人あれば 原子力 クリーンで安全 安いと答えよ

◆原子力神話の崩壊
3.11の事故で、神話は完全に崩壊した。
原子炉のメルトダウンが発生したことで、神話はもちろん、原発の存続も困難になった。
社会的には、事故の実態を隠蔽しつつ公表してきたため、世の不信感も深刻化した。

-- ◇忍ぶれど ボロは出にけり 事故状況 まだあるはずと 人の問うまで

◆原子力エネルギーからの転換
原子力は完全無欠ではないから、何らかの原因で今回のような事故は起る。
事故が起きた時、それを制御する<技術>がないことが実証された。
原子力エネルギーからの転換は、もはや必然なのである。

◆元歌(もとうた)
-- ◇わくらばに 問ふ人あれば 須磨に浦に 藻塩たれつつ わぶと答えよ
--   (在原行平 古今集 平安初期)

-- ◇忍ぶれど 色にいでにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
--   (平兼盛 拾遺集 平安中期)

2011年06月09日

原発事故:神話崩壊に思う

◆改めて神話崩壊に思う
最近、つぎつぎと明らかになってきた原発事故の実態。
そうだったのか、と驚かされる。
やっぱり、と変に納得したりもする。

◆落首三題
-- ◇ 七重八重 壁はあれども 原発は 炉のみっつまで 溶けて悲しき
-- ◇ 炉心溶融 うち出でてみれば 放射能 空気・水・土 汚染されつつ
-- ◇ 対放射能 ニホンの技術 眠らせて 水はフランス ロボットはアメリカ

もろかった!
どうなるの?
アホか。

◆元歌(もとうた)
三題いずれにも下敷きになる元歌がある:
-- ◇ 七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき
-- ◇ 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
-- ◇ 太閤は 四石の米を 買いかねて 今日も五斗買い 明日も五斗買い

2011年06月06日

原発事故:NHKがやや軌道修正

◆NHKらしい原発報道を視る
1ヶ月ほど前、「NHK危うし」という記事を書いた¥
その後のNHKの原発事故報道は、相変わらず政府・東電の発表をなぞっていた。
それが、少々、変ってきたように感じさせる番組が、日曜(6/5)の夜に並んだ。

- ・21:00-22:00 NHK総合~NHKスペシャル「原発事故はなぜ深刻化したのか」
- ・22:00-22:30 NHK教育~ETV特集「続報・放射能汚染地図」
- ・22:30-23:30 NHK教育~ETV特集「暗黒のかなたの光明」

◆NHKスペシャル「原発事故はなぜ深刻化したのか」
これは、シリーズ「原発危機」第1回となっている。
NHKは、事故後3ヶ月、ようやく原発事故報道を<真剣に>やり始めたということか。
内容は、さすがNHKというべき充実感はあった。

以下に、NHKのHPの番組紹介を転載する:

いまだに危機的な状況が続き、予断を許さない原発事故。当初の想定を超え、水素爆発やメルトダウンなどが進行し、後手後手の対応のなかで、汚染は拡大していった。
なぜ、ここまで事故は深刻化したのか。
事故対応にあたった官邸、保安院、原子力安全委員会、東京電力は、どう動いたのか。
当事者たちの証言と内部資料をもとに徹底検証する。

 ◇ ◇ ◇

事故当初の対応の拙劣さが指摘されているが、番組内で当事者も率直にそれを認めている。
しかし、今回の事故の当事者の責任とはいえない面もあるようだ。
事前に準備すべき危機管理システムが不備であったことも事故深刻化の要因であった。

・格納容器のベントを手動で実行するマニュアルが用意されていなかった。
→ そのため、容器の設計図を調べ、手動ベントの手順を検討せざるを得なかったという。
・住民避難の状況の確認に手間取り、ベント実施が遅れた。

なによりも、メルトダウンが壊滅的な原子炉爆発に至らなかったのは、奇跡であった。
仏様のご慈悲か、神様のご加護か、日本は見捨てられていなかった。
そのことを胸に、これからの事故対処をしていかなくてはならないのである。

◆ETV特集「続報・放射能汚染地図」
そのための重要なステップは、詳細な「放射能汚染マップ」の作成だ。
この番組では、大学の研究チームが新開発の測定装置で計測したマップを公開した。
この装置を車に載せて、原発30km圏内のある自治体をくまなく回った結果である。

マップでは、中心部は低レベルで、原発側にやや高レベルの地点が散在していた。
また、原発側の山間部には避難レベル相当のいわゆる<ホットスポット>が見られた。
このことは、避難地域を、同心円や自治体レベルで区切る無意味さを示している。

文部科学省は、全国の大学から人材を集め、詳細な汚染マップ作成を開始したという。
80人体制というが、本格的・長期的な調査・分析には、一桁足りないのではないか。
福島大学に<汚染調査センター>を創設し、国として総力を挙げて取り組むべきだ。

◆ETV特集「暗黒のかなたの光明」
これは、比較文明学者の故・梅棹忠夫氏の<予見>を検証しようという試みの番組だ。
梅棹氏は、人間の知的好奇心の行き着くところに<文明の破滅がある>と予見した。
原子力利用とメルトダウン事故は、その象徴のように思われる。

人間の創るものに、完璧なものはない。
完璧と思う<驕り(おごり)>は、自然の暴威の前に、もろくも崩される。
西欧的な科学技術優先ではなく、自然と謙虚に共存する文明が必要だ、と教えられた。