ことば:ただ過ぎに過ぐるもの(枕草子)
◆「枕草子」第245段より
ただすぎにすぐるもの 帆をあげたる舟。人のよはひ。春夏秋冬。
(ただ過ぎに過ぐるもの 帆を上げたる舟、人の齢(よわい)、春夏秋冬)
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「ただ過ぎに過ぐるもの」で一気に興味がそそられる。
「帆を上げたる舟」が絶妙の一句で、実感し、納得。
起・承ときて、「人の齢、春夏秋冬」に転じる。
思わぬ展開は衝撃的だ。
そして、「結」は読み手に委ねられ、つい、感慨にふける。
ふと、冒頭に引き戻され、「ただ過ぎに過ぐるもの」が改めて心に深く沁み入る。
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一文字の無駄もない。
心の底に潜在的に渦巻いている哀感を、みごとに語り尽くしてくれる。
清少納言は、1200年前にこれを書いた。
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