世相:『牛肉』に見る日米の異次元的格差
◆米国~温暖化防止のため『牛肉』離れが進む
1月12日(日)、CNNにチャンネルをあわせた。
地球温暖化への危機感から、米国で『牛肉』離れが進む事情をレポートしていた。
予想を超える米国社会の変化に驚いた。
なぜ『牛肉』が温暖化の犯人とされるのか?
牛は餌を食べると4つの胃を使って反芻し消化する。
その過程でさかんにゲップを繰り返す。
ゲップの主成分はメタンガス。
メタンガスは、おなじみの二酸化炭素(炭酸ガス)より格段に温暖化に寄与するという。
米国の『牛肉』の大量生産、大量消費は、メタンガスの大量放出につながっている。
また、牛の飼料を栽培する農地は食料の生産効率が悪い。
同じ農地で人の食料を栽培する方が、『牛肉』よりも多くの食料を生産できる。
さらに、肉食から健康志向の食事に変えようとする流れもある。
◇ ◇ ◇
今、脚光を浴びているのが農作物から、直接加工される植物性の肉。
米国では、行政、研究所、大学、民間企業などが、鋭意、その開発に取り組んでいる。
これが『植物由来の肉』で、既に、いろいろな商品が市販されている。
類似の食品に、植物油を加工して作られる「イクラ」がある。
本物そっくりで、低価格でコレステロールが少なく、植物由来で環境にも優しい。
人工魚卵の「イクラ」は、消費者に十分受け入れられている。
同様に、 数年後には、『植物由来の肉』が食肉市場に定着するかもしれない。
新しい「植物肉」が従来の「動物肉」を圧倒しているかもしれない。
この動向からは眼が離せない。
『牛肉』離れに直面する米国は、貿易交渉でそのハケ口を日本に求めるのは当然だろう。
◆日本~安くなった米国産『牛肉』にはしゃぐ
同じ日、Abema TV(テレビ朝日のニュース)を見た。
関税引き下げで値下がりした『牛肉』にはしゃぐスーパーと消費者をレポートしていた。
日米貿易協定で関税が今年から引き下げられた。
今月から38.5%が26.6%になり、以後段階的にダげられ、2033年には9%。
それだけ原価が下がるので、消費者価格も下がる。
早速、先乗りのスーパーが正月早々に『牛肉』値下げバーゲンを打ち出した。
大盛況で、売上は大埴に伸び、担当責任者はホクホク顔。
バーゲンに駆け付けた顧客は『牛肉』パックを手に大満足のエビス顔。
それほどまでに『牛肉』を食いたいか?
・国内酪農家の苦境は気にならないのか。
・『牛肉』環境汚染は気にならないのか。
・食料の輸入依存増は気にならないのか。
・Win-Winという貿易協定は、日本完敗の関税下げであることは気にならないのか。
・食の健康志向にもとる『牛肉』に飛びつくことは気にならないのか。
・『植物由来の肉』の国内開発・販売の遅れは気にならないのか。
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◆温暖化対応に出遅れの日本
主食は『牛肉』 といわれてきた米国。
それに比べれば、安くなった米国産『牛肉』の輸入量の増加はたかがしれている。
しかし、『牛肉』を介して見える温暖化対応の日米の相違は、異次元的な格差といえる。
昨年、二度の国際環境会議で、某環境大臣は日本の環境無策ぶりをさらけだした。
環境先進国であるべき日本は、世界の潮流に2~3州遅れとなってしまった。
世界に発信され、冷笑された汚名を挽回するのは容易ではない。
政権ヨイショの無能マスメディアは、この深刻な状況の報道を避けている。
彼らがタレ流すのは『牛肉』 狂想曲のあおり報道、そこで踊る笑顔の消費者達。
目先の利益、目先の風潮にどっぷりと浸る日本の現代社会。
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